今月の注目本 心の扉を叩くエッセイ
ダンスの魂 著者:七類誠一郎
ダンスの魂 著者:七類誠一郎 02/エッセイ

 マイケル・ジャクソンのバックダンサー経験があり、現在は日米でダンス学校長を務める──。その経歴を聞くだけで、著者は華やかなダンスの道を歩んできたと想像できるが、そんなトニーティー氏は「私とて生まれながらに上手かったわけではない」と述懐する。
 瀬戸内海、因島出身の彼が初めてダンスに触れたのは大学入学後。踊り方も知らないまま、ダンスパーティーに参加すると、今まで味わったことのない快感に目覚める。以来、ダンスの魅力にとり憑かれた著者は、日本初のブレイクダンスチームのリーダーとなり、単身渡米。狭き門のオーディションを驚異的な確率で勝ち残り、その実力を認められていく。
 しかし、念願のマイケルとの仕事が叶った時、素晴らしい経験を得たと同時に、ある疑問に気づく……。バックダンサーはどれだけ優秀でも脇役止まり。それでは人生つまらない。「たとえ無名でも貧乏でも、自分のダンスを追求したい」──心の解放に通じるダンスの楽しさを体現してきた著者が贈る、パワー漲る情熱エッセイ!

天性の輝き 荒野予而栄の生涯 著者:田島敬子 02/エッセイ

 荒野予而栄は22歳の時、美人画の大家・伊東深水画伯のもとへ入門し、以来8年間、女性の書生第一号として、寝食をともにした。その後60年にわたり日本画家を職業とした彼女の名は、画家名鑑には見当たらない。公にはその名をほとんど知られていないが、予而栄は控えめながらウイットに富み、機転も利いたため、深水画伯の妻・好子さんには実の娘のように可愛がられたようだ。
 画号の「予而栄」は“予め而して栄える”という意味を持ち、自ら名付けたものである。本書は、予而栄の姪である著者が、懐かしい思い出とともに、叔母の画家としての才能、そして人間的魅力を綴ったエッセイ。女優・朝丘雪路は「この本を誰よりも泉下の父、深水が喜んでいることでしょう。仲良く二人で絵筆をとりながら寄り添う姿が目に浮かんできます」と言葉を寄せている。
 予而栄は、じっくり腰をすえて「一枚の絵」に向かい、魂を打ち込んだ画家であった。清らかな心で、そして無欲に、ただ描き続けた人生とは……。表紙にもなっている『薄墨桜』とともに、じっくり味わっていただきたい一冊。

天性の輝き 荒野予而栄の生涯 著者:田島敬子
“うつ”の夜明け 精神科医からあなたへ 著者:本田昌毅
“うつ”の夜明け 精神科医からあなたへ 著者:本田昌毅 02/エッセイ

 うつ病の人を勇気づけるために「気の持ちようだから前向きに考えよう」「もう少しだけがんばってみようよ」などと声をかけたことはないだろうか。じつはこれらの言葉はとても危険なのである。励ましのつもりが、絶望の淵に追い込んでいく言葉になっていたとしたら……。
 精神科医であり、企業メンタルマネージャーである著者は「うつ病はたんに気分が悪くなるという単純な病気ではない」と警告を発する。それと同時に、決して“治らない病気”ではないことを伝えている。日本の社会には、気軽に精神科に足を運べる雰囲気がなく、どうしても他人の目を気にしてしまうことがマイナス要因として挙げられている。おなかが痛ければ内科へ、鼻の調子が悪ければ耳鼻科へ行くのと同じように、心が疲れたら精神科へ通う──そんな社会が少しでも早く実現できるように、著者は様々な提言をする。
 「うつ病とは何か?」「人はどうしてうつ病になるのか」といった素朴な疑問に答えながら、多角的な視点でうつ病撃退法を綴ったハンドブック(巻末にオリジナルうつ病診断テスト付)。

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