今月の注目本 我が子への果てなき想い
新生児重症仮死 〜それでも我が子は百十三日生き抜いた〜 著者:蓮月嬰女
新生児重症仮死 〜それでも我が子は百十三日生き抜いた〜 著者:蓮月嬰女 02/エッセイ

 子供好きな夫婦のもとに宿った小さな命──著者である妻は医療事務の仕事を辞め、出産育児に備えた。そして自分が長年勤めた病院で産むことを決める。予定日は5月5日、こどもの日。妊娠の経過は良好で、あとは無事に産むだけ。しかし陣痛開始から長時間経っても、まだ産声を聞くことができない。帝王切開も願い出たが、時間は過ぎていくばかり。最終的に吸引分娩となり、難産の末、可愛い女の子が誕生した。でも赤ちゃんは泣いてくれない……。
 脳に酸素が行かない時間帯があり、我が子は後遺症を負うことに。医師から“新生児重症仮死”と聞かされ、夫婦は強いショックを受ける。それでも「顔が見られて幸せ。愛らしく可愛くてたまらない」という想いで、娘を姿月(しづき)と名付ける。保育器の中の我が子と初めて握手できた日の感動。初めて抱っこした時の腕にかかる重み。ごく普通の出来事に、幸せを感じる日々……。
 その一方で、出産時の病院に対する思いや後悔の念を抱きながらの生活が続く。葛藤に悩まされる夫婦を元気づけるのは、家族の温もりであり、友人の優しさであり、何より娘の姿だった。「二、三日の命」と言われた姿月ちゃんは、奇跡的な生命力で生後百日を迎えることができた。百十三日間という短くも充実した人生を生き抜いた我が子──その軌跡を綴った母の手記。

不妊治療最前線 〜男性不妊の闇に挑む〜 著者:黒田優佳子 11/科学・医学

 日本における不妊症の治療は、ここ数十年で劇的に変化し、かつては妊娠を諦めざるを得なかった人でも、体外受精や顕微授精など高度生殖補助医療技術の進歩で妊娠できる時代になった。その一方で、医療技術レベルの地域格差や、インフォームド・コンセントの不十分さといった問題も生じている。
 それに加えて、不妊の原因は男女半々であるにもかかわらず、女性サイドのみに負荷が重く圧し掛かっている現状があり、男性不妊の裏に潜む問題はなおざりにされている。元気な精子をうまく作れない「造精機能障害」は男性不妊の大半を占め、精子減少傾向は世界的にも進みつつある。さらに注目すべきは「副性器障害」と呼ばれる、精子の質が下がる現象である。昨今では精神的ストレスもひとつの要因と考えられている。不妊治療には、人工授精や体外受精など様々な方法があるが、本書では顕微授精のリスク(流産率の高さ等)にも触れ、今後の課題も提示されている。
「不妊治療のゴールは妊娠ではなく、健康な赤ちゃんが生まれ、その子が健康に年を重ねていくこと」と考える著者。自ら設立した“黒田インターナショナル メディカル リプロダクション”の理念と特徴を紹介しながら、生殖医療の質の向上に一石を投じた書。

不妊治療最前線 〜男性不妊の闇に挑む〜 著者:黒田優佳子
Boon-gate.comトップページに戻る
 
バックナンバーはこちら
copyright(C) bungeisha co.ltd. All right reserved.