雄弁な人は好きではない。
無愛想で、その場の雰囲気をぶちこわすように無口を貫く人も苦手だが、よどみなくしゃべられると引いてしまう。用意された、無感情な言葉のように思えてしまうのだ。寡黙な人の言葉のほうが、真実に近い気がして心に残る。Y君がそうだった。
以前の職場で、私には何人かのアシスタントがいた。Y君はその中の一人だった。忙しく、カリカリしがちな会社だったので、みんな息抜きにしゃべりながら仕事をしたものだが、Y君はそんな輪の中には決して入らず、ただ黙々と働いていた。もともと人見知りというY君は、人と話そうとすると逆に気を使ってしまい、リラックスできないそうだ。
「Y君の声、聞いたことないかも。」
と、言う人がいたくらい、もの静かな子だった。そんなY君に、忘れられない感動をいただいた。私が会社を辞める時、最終出勤日のことだ。
その日、フロアのみんなから花束や手紙をいただいた。BGMまで流しながらの贈呈式?が盛り上がり最高潮に達した時、上司が私への送辞をY君に振った。みんなの視線がY君に集まる。そして、少しの沈黙のあとに、Y君が真っ赤になりながら言ってくれた。
「・・・本当に、ありがとうございました。いろいろ教えていただいて・・・。」
言葉に詰まりながら、ただそれだけ。でも、ゆっくりとつぶやかれたその言葉とその時のY君の姿は、今も胸に残っている。嬉しくて、私は何も言えなかった。
はたして職場でどれくらいのことをやり遂げたのか、まったくわからない状況にいた私をすべて肯定してもらったような気がした。「感動」というお題をもらって、いの一番に思い出したエピソードだ。
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