コラム

column 22

編集部ひそひそ話  −見た夢の話−
我が家の愛犬・デブリン(仮称・メス・9歳)の寝床は、私のベッドの中である。

ずっと母の布団の上で寝ていたデブリンであるが、最近は私の足元にもぐりこんでくる。どんな心境の変化なのか。それはわからない。 犬は夢を見るかどうか。見ないでしょ、犬の脳波じゃレム睡眠が確認出来ないし・・・というセリフは犬を飼ったことのない人の言うことで、この愛しきものを抱いて眠ったことのある人ならば、体験として、犬が夢を見ていることくらいわかるはずだ。

ウチの犬も夢を見る。足がビクッと持ち上がり、目がヒクヒクする。極めつけは寝言で、小さく“バウッ、バウッ”とうなることもあるし、“ヒュンヒュン”と甘えとも怯えともつかないような声を出すこともある。怖そうにしている時には「夢だよ、夢だよ」と声をかけて丸い背中をさすってあげる。よく、寝言を言っている人に話し掛けてはいけないというが、犬に対してもそうなのだろうか。

一度、デブリンが死んでしまう夢を見、飛び起きたことがある。急いで足元で寝ている犬を見る。ドキドキしながら「デブリン」と声をかけたがピクリともしない。体を揺すっても起きない。なんだか固くなっている気がする。私の心臓は止まりそうだった。まさか、心臓発作でも起こして死んでしまったのではないだろうか。私は正夢を見たのだろうか!? 

もう一度、体を揺らしながら愛犬の名前を呼んだ。そうしたら・・・。
迷惑そうに、彼女は薄目を開けて私を睨んだ。口がきけたら「なんだよぉ〜・・・」とでも言いたそうな顔つきである。熟睡していただけなのだ。ホッ。

そういえば、犬の夢を見るのは縁起が悪いらしい。まあ確かに、と頷ける。犬がいなくなる夢など見た日には、その日一日ブルーだもの。

ならもも

 万葉集の歌には「夢」が多く出てくることをご存知だろうか。その多くが読み人知らずの歌に出てくる。防人として東国に赴任し、故郷に残した妻や愛する人を想っている歌である。
 防人で東国に赴任することは現代で言えば単身赴任ということになるだろう。
 今日のコラムのテーマはここからである。
 もし、あなたの夢に好きな人が出てきたら、あなたはどう解釈するだろうか。その人を想っているあまり、その人の夢を見てしまった。そう答える人が多いのではないだろうか。
 それが、万葉集ではこうなる。今日も妻が夢に出てくれた。何てうれしいことだろう。そんなにも私を想ってくれるなんて。潔いくらいの妻への愛情が表現されていると想う。それを知ってから、恥ずかしいのだが、夢に好きな人が出てくるとうれしかったりする。両想いということになるからである。

 この頃、私はよく娘の夢を見る。私は夢を覚えているほうなので、その度にたった一人の娘のことを考える。私のところに来てくれたんだな、と想うようにしている。
 私は彼女の夢に出てくるのだろうか。
 そういえば、一緒に川の字で寝ていた頃「パパ」と寝言を言ったのを聞いたことがある。私の夢を見ていたのだろう。  離れてしまった彼女の夢にどうすれば行けるのだろうか。

渡辺

20代半ばの頃。そのころの私は悪いことがひたすら重なっていて、いいかげんに楽しいことの一つでもないとやっていられない気分だった。
そんなとき、命をかけて(?)すてきな出会いがありますようにと、自分の神様に願をかけた。

ある朝、他の夢とは違うリアルな夢に驚いて目を覚ました。男の人と向かい合って静かに食事をしている夢。レストランの風景だけだったのに、夢から覚めてしばらくたった頃、なぜかそこが富士山の麓の遊園地の中だと分った。
あまりに強い印象に、私は正夢だと確信した。
夢の中で出会った男性は、落ち着きがありとても魅力的な人だった。こんな人が彼氏だったら・・・・。いや、この人が将来の私の彼に違いない!と、それまで弱っていた私はかなり元気になった。

3ヵ月後、ずーっと一人だった私に、彼氏ができた。夢で見た彼とはまるで別人だった。やはりただの夢だったのだと、新しい彼との幸せな毎日にリアルな男の夢のことなど全く忘れてしまった頃、一人の男性に出会った。
顔中ヒゲだらけで、するどい瞳の男の人だった。彼がいても別の人を好きになるんだな、なんてひとごとのように考えながら、初デートにのぞんだ。
おっ、ひげを剃るとなかなかいい男じゃない!ウキウキでデートの場所を二人で富士急ハイランドに決めた。

到着すると、もうお昼。まず腹ごしらえしてから、とレストランで向かい合ったその時。夢で見た彼だと気付いた。その人に会うのは2回目だったが、あまりにヒゲが濃すぎて以前は気付かなかったのだ。
夢で彼を美化し、イメージをふくらませるだけふくらませていた私が恋に落ちるのに時間はかからなかった。そして、彼も。

ここで話が終われば白馬に乗った王子様が現れてめでたしめでたしとなるのだが、現実はそう上手くはいかない。デートするたびに、いつも泣かされて帰ってきた。美化していただけ、ギャップは大きかった。
どうしてあの人を夢に見たのだろう。本当に役たたずの正夢である。


まな

 私はほとんど夢を見ないか、忘れてしまうのだが、たまに良い夢を見ると翌日一日とても気分がいい。でも内容を覚えていられるものはごくわずか。好きな俳優に迫られたとか、アーティストに楽屋に呼ばれて個人的に話をしたとか、かすかに幸せな夢を見たような記憶があるだけだ。
 最近では、悩みがあるとそれが解決されている夢を見る。別れた彼と元サヤになっていたり、仕事の失敗がそれこそ夢であったり。そして朝起きて落胆する。ああ、現実はちっとも変わっていなかった。いい夢だけど、辛い。もっと素敵な夢を見たい!

 ただ、今でも一つだけ美しい夢を覚えている。小学生の時に見た夢だ。詳細は忘れているが、あまりにも印象的だったので、情景だけがぼんやりと記憶に残っている。

 私は夜の花畑にいた。でも真っ暗ではなくて、深い紫色を闇に溶かし、薄い光のベールを被せたような、神秘的な宵の色。空には無数の星が瞬き、ほんのり色のついた花々が暗色の中でゆれていた。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に出てきそうな雰囲気だ。  私は確か、花の間をゆっくりと歩き、一つの温室を見つける。その中も外と全く同じ風景で、闇に染まった花たちが、私のひざの高さで身を寄せ合っていた。

 今思い返すと実にメルヘンチック。だいぶデフォルメされているに違いない。でもその頃の私は、いつかその場所に行けると信じていた。しばらくあの情景を思い出しながら、ひどく清らかな気持ちになったものだ。

 あんな夢はそれっきり見ていない。私はあの夜の花畑に行ける日が来るのだろうか。いや、夢でもいい。もう一度あんな心洗われる景色に出会いたい。

 そういえば大人になってから見る夢は、願望だの悩み事だの、現実的なものが多い気がする。子供だけが見られるものがあるのだろうか。これを気に、純粋な気持ちを取り戻してみよう。ほんの少しでいいから。

みらい



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