はじめまして。「トゥクトゥク・タイランド」著者の三澤徹也と申します。
「トゥクトゥク」という被写体と、それにまつわる小咄を、この機会に連載というかたちで連ねてみたいと思います。
まずは「トゥクトゥクとはなんぞや?」。ズバリ、「タイの三輪車タクシー」であります。「微笑みの国」と形容される東南アジアの王国、タイランド。その首都であるバンコクに降り立つと、東京に勝るとも劣らない大渋滞が繰り広げられております。政府はモノレールの建設やら地下鉄の計画やら、様々な交通渋滞解消に関する都市計画を挙げているようですが、まだまだ、通勤ラッシュ時や祝日の渋滞には凄まじいものがあります。そこでは、およそ考えられる車輪付きの乗り物すべてを見ることができるでしょう。余談ですが、十数年前には4本足の象さんも立派に輸送手段として活躍していたそうです。しかし、排出する糞とその巨体故のスロー・スピードが、他の交通手段の障害になるという理由で、現在ではバンコク市内における象さん立ち入り禁止令が存在しております。そのバンコク大渋滞の中を、嬉々として走り回っている小さな変わった三輪車が「トゥクトゥク」です。
外国人にとって特異に見える「トゥクトゥク」は、赤や青、黄色や緑、シルバー等に塗装され、オートバイのようなハンドル、車体後部に3人連座のシート、幌屋根に「タクシー」と表示された標灯、三ツ目ライト、そしてなんといっても、タイヤが前1輪後2輪の三輪車といった、ひょうきんな出で立ちをしております。このヘンテコリンな乗り物である「トゥクトゥク」ですが、正式名称は「サムロタクシー」。(タイ語で数字の三がサム、車輪がロー、そして英語のタクシー)「トゥクトゥク」の語源は「サムロタクシー」のエンジン音からきていると言われます。昔の「トゥクトゥク」は250ccの2サイクルという型式の小さなエンジンでした。その小さなエンジンでトコトコ走っていたので「トゥクトゥク」という名称が付いたのでしょう。アフリカや中東の国で、オートバイを「ポコポコ」とか「ピキピキ」とか呼ぶのと同じでしょう。話が逸れますが、この短い発音2連で作られる単語というものは、世界共通で存在します。特に幼児でも解る単語に見られるようです。インドネシアではイルカを「ルンバルンバ」。マダガスカルのキツネザル科のお猿さんは「アイアイ」。日本でも「わんわん」とか「にゃんにゃん」。(別の意味で「にゃんにゃん」もありましたが) そう!何が言いたいかというと「トゥクトゥク」と言えば、タイでは小さな子供でもよーく知っている生活に密着した乗り物なのです。
交通渋滞のちょっとした隙間に前輪を突っ込み、十数センチの車幅感覚で少しでも前に進み、軽量故の加速で渋滞の列のトップに踊り出る。客を見つけるとあわてて路肩に寄り、乗せた後は目的地までまっしぐら。客席に乗車すると、外気を遮る物は、天井の幌屋根と、ドライバーの前にあるフロント・ガラスのみ。シートベルトなんてあるわけなく、車体が右旋回するときは、その遠心力に耐えるために、両手で手摺りをしっかりと握り、両足で踏ん張らなければいけません。乗車料金は、交渉制。つまり、乗り込む前に行き先を告げ、運転手と話し合います。足元を見られると、高い料金をふっかけられるので、それなりの駆け引きも必要です。
さあ、次回からは、このタイの摩訶不思議な乗り物「トゥクトゥク」にまつわるエピソードを書いてゆきたいと思います。ではでは!
つづく
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