コラム

document 07 「回想トゥクトゥク撮影紀行」
 私は、「トゥクトゥク」を撮影するだけでなく、乗る事もモチロン大好きなのです。バスやタクシーだと、目的地までの移動空間がガラス越しの箱の中になり外界と隔てられ、風景の傍観者になってしまいます。「トゥクトゥク」だと、街の匂い、音、風景がフィルター無しで五感を刺激し、風景に溶け込んでいる感覚になれます。そして何と言っても「トゥクトゥク」との一体感が大好きなのです。それならばバイクタクシーは? という疑問が湧きますが、私自身オートバイ乗りである事から、絶対に見知らぬ人のオートバイの後ろなんぞには乗りたくないという観念があり、私にとってバイクタクシーほど怖い乗り物はありません。中には危険な運転をする「トゥクトゥク」のドライバーもいますが、そんな時はさっさと降りてしまう事にして、のんびりした快適「トゥクトゥク」ライフを送る事にしています。
観光地で、向こうから話しかけてくる「トゥクトゥク」運転手は別として、ほとんどの「トゥクトゥク」運転手は、とても恥ずかしがり屋でした。降り際、お礼を言ってレンズを向けると、恥ずかしそうな顔をしてうつむき加減に写真に収まってくれたり、中にはあわてて「うわあ! やめてくれい! 」と言わんばかりに、笑いながら「トゥクトゥク」を発車させ逃げるように去ってゆく人もいました(本当に何かの犯人で、カメラ見て逃げていたりして……)。
チェンマイで逢ったブンさんは、英語が全く通じず、私のタイ語のレベルもひどいものなので、言葉によるコミュニケーションは全く成り立たなかったのですが、何故か、身振り手振りで「明日、空港に行くので、〜時にここで待っていて下さい」という意志の疎通が図れました。地方の街で、ちょっとでいいから安全なところで運転させてもらう事を条件に、1日チャーターを頼んだ事があります。そのドライバーは、私に運転を替わった郊外の数百メートル区間、今まで見せなかったような心配そうな顔付きで、黙って後ろに乗っていました。早朝のバンコクで、カメラ片手に撮影をしていると、決まって「トゥクトゥク」が減速し寄ってきます。そんな時、ドライバーに乗らない素振りをして意志を伝えると、残念そうに加速してゆきます。バス停では、急ぐ人がバスを諦め「トゥクトゥク」を拾うケースが多々ありますが、そんな人目当ての「トゥクトゥク」が停留所の前をゆっくり流している様は、まるで大型動物のおこぼれを狙う小動物のようです。通常3人掛けの後部座席に、どう見ても8人以上へばりついて乗っている高校生グループ。もう積めないというほどのふとんを乗せ、最後に幌屋根の真下にへばりつくように、積んだふとんを押さえて乗っている人。目的地に辿り着く前に、絶対にひとつやふたつは落とすだろうなと思うほどの量のスイカを載せている「トゥクトゥク」。女性ドライバーや、オカマのドライバーもいました。
いつの頃からだったか記憶が曖昧なのですが、料金交渉の際、とにかくほとんどのドライバーから「100バーツ」という答えが最初に返ってくるようになりました。どんなに近い所でも100バーツ(300円前後)。英語が全く通じないドライバーでも100という単語だけは知っているようです。数キロの距離を本当に100バーツの言い値で乗ってくれる観光客がたくさん出現してきたからなのでしょう。明らかに言ってはみるモノだ作戦です。強気のドライバーも増えてきました。しかし、「トゥクトゥク」は1台ではありません。値切れとは言いませんか、料金交渉も楽しむ気持ちでやれば、ドライバーとも仲良くなれます。

つづく

三澤徹也(写真家/『TUKTUK in Thailand』好評配信中)

(01)「トゥクトゥクとはなんぞや?」
(02)「トゥクトゥク初体験の巻」
(03)「トゥクトゥクQ&A その壱」
(04)「トゥクトゥクQ&A その弐」
(05)「タイで見かけた女性編」
(06)「もしかしてピー?編」
(07)「回想トゥクトゥク撮影紀行」
(08)「日本のトゥクトゥク事情」


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