ども。SF長編『クリスタライズド』(5月末日配信予定)を書きました安西啓と申します。
この小説、実は別のペンネームでSF新人賞に応募して、最終選考に残ったものを加筆訂正したものであります。選考委員のうち、笠井潔さんだけはわりと好意的に評価してくださったのですが、他の方の評価はあまり芳しくなく、特に、尊敬するあるSF作家の方からは「散漫な印象」というお誉めの言葉をいただいてショックだったりしました。
ところでこのタイトル、もちろん、英語のcrystallizeの受身形、受動態であります。あるいは過去分詞。英語の授業が嫌いだった方、すんません。
こうした、動詞の受動態のタイトルというのは、英語では結構あるようです。たとえば映画の『ドリブン』もそうですね。私自身はあんまり英語は得意じゃないんですが、ついついそうしたタイトルの付け方の真似なんかしちゃうわけ(『ドリブン』よりも先に書いたんだけど。念のため)。特に映画のタイトルをいただいちゃうことがわりとあって、『ショートショートの広場12』(阿刀田 高 編 講談社文庫)に載ったショートショートなんか、『かさぶらんか!』なんていうタイトルだったもんなあ。言うまでもなく、元ネタは『カサブランカ』ね。映画とは全然関係ないけど。なんでひらがなで、しかも感嘆符が付いているかは実際に読んで確かめてみてください。ついでに私の昔のペンネームもわかります。以上、宣伝でした。
そう言えば、『理由なき朝食』なんてのも書いたことがある。ボツになったけど。
受身形ではないんですが、単語一語のタイトルというのも作家によっては好きなようで、たとえばあのディーン・R・クーンツなんかもよく付けています。ペーパーバックでも800ページを超えるような大長編に、たった一語のタイトル。しかもごくありふれた普通名詞! これほど小気味よいことはありません。あるいはセンスがあるというべきか。ヘタすると「もうちょっと工夫しろよ」なんて思ったりしますが、とりあえず小説そのものは好むと好まざるとに関わらず一級のエンターテインメントなんだから文句はありません。
あ、SFでも究極の普通名詞一語タイトルがありました。『デューン 砂の惑星』(フランク・ハーバート ハヤカワ文庫SF)。原題は“DUNE”です。「砂丘」という意味ね。あのものすごい大長編がたった一言で要約されるとはすごい。映画も『砂の惑星』という邦題だったけど、これは20年近く前だったからだろうなあ。今ならまんま『デューン』なんて邦題になってたに違いない。1960年代だったら『SF砂まみれになってスパイスを横取りしろGoGo作戦』か。タイトルの頭にわざわざ「SF」って付けるところがキモね。古くてごめん。
あと、海外の小説で多いタイトルは、人物名と物体の名前を“and”で結ぶというもの。ハリポタシリーズもそうですね。中には登場人物をフルネームでまんま使っちゃってるのもある。映画の『ギルバート・グレイプ』や『サイモン・バーチ』もそうですね。古い小説では、『マノン・レスコー』(アベ・プレヴォー)ってのもあります。うろ覚えだったりすると、アベ・プレヴォーが書いた『マノン・レスコー』なのかマノン・レスコーが書いた『アベ・プレヴォー』なのかわからなくなってしまう。あるいは『アドルフ』を書いたコンスタンなのか、『コンスタン』を書いたアドルフなのか不安になったりもする。
冗談はさておき、タイトルも作品の一部。大切にしたいものです。たった一語のタイトルを付けるにせよ、思いっきり長くてキザなタイトルを付けるにせよ、読者の皆さんに期待を抱かせるものが理想と言えるでしょう。自信ないけど。
しかしなあ、特にテレビドラマとかJポップなんかに多いんだけど、最近、どうも過去の有名作品のタイトルをそのまんまいただいてるのがあって、著作権法上、問題がないんだろうかと心配になったりする。しかも、元ネタとなんの関係もないとあっては……。ま、私なんかがとやかく言う筋合いではありませんが。でも、少なくとも元ネタの存在を知らないってのはちょっと悲しいかもね。
つづく
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