人間もセミも、あるとき生まれて、一生懸命に生き(その長さは違うけれども)、やがて年老いて死んでいくのは同じ……。今回紹介する『おくれてきたセミ アブラハムの冒険』には、社会奉仕に携わってきた著者・奥田征彦さんのそんな思いが詰まっています。
2001年の夏、尼崎で幼児が虐待の末に命を奪われた事件……。被害者のAちゃんと交流のあった奥田さんはこの事件に強いショックを受け、Aちゃんに捧げる物語を作りたいと願いました。そのとき生まれたのが『おくれてきたセミ アブラハムの冒険』です。この物語はセミの果敢な冒険を描いただけに留まりません。生きることの意味、友人や仲間の大切さ、輪廻転生の概念など、さまざまな哲学的要素が分かりやすい言葉に置き換えられています。若き者はやがて老い、新しい命に“生”を託していく……。そんな命の伝達が、この物語の中心にあります。
小学生でも分かるやさしい文体。そして大人が読んでも胸に迫るテーマ性。夏休みに親子で一緒に読んで欲しい作品です。物語に彩りを添えるイラストもたくさん入っています。沖縄の空を自由に飛びまわるセミの姿には、かわいらしさとともに力強く生きる心が描かれています。命の尊さ、生きることの大切を教えてくれる一冊を、ぜひ手にとってみてください。 |
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